[ポレポレ農園 イチゴ農家への道のり]

2010年9月 サラリーマン 本当に辞めるの?

ディーリングルームよ、さらば。

会社人の頃に、ベトナムのホーチミン(旧サイゴン)を訪れた時の話である。
当地では友人が経営する旅行会社の現地ガイドが、終日案内してくれることに。
この20代のベトナム人は、我々のわがままに散々つきあってくれた後、
「疲れたでしょうからワタシが共同経営するマッサージ店はいかがですか」
夕方になって彼はカタコトの日本語で聞いてきた。
「あなたの店なの?」と驚くと、
「他に土産店も持ってマス。今はレストランを始める準備をしてマスよ」
当時販売開始したばかりのiPhoneを持ちながら答え、そして
「ホンダのバイク、輸入デキマスか?」
彼は、笑いながらも熱い眼差しで、じっと見つめてきたのである。


私は2010年に20年間のサラリーマン生活を辞めた。
16年間銀行、4年間証券会社に勤務し、金利・為替・デリバティブのディーラーをやってきた。
リーマンショックの時は、米系金融機関が次々破綻する原因になったCDS・証券化商品を
取扱うチームの責任者だった。おちおち寝ていられない緊張感、というかストレスは相当なもの。
でも好きだったとしか言えない。気づいたら20年間やっていたのだから。


辞めた最初の感覚は不思議なものだった。心と体に羽が生えたように軽い。浮かれていたわけではない。
これから何でも始められるという柔軟性なのか、とにかく景色が違って見えたのは驚きであった。
観光農園を始めた今も、やりたいことが次々と妄想として湧いて来る。
これはサラリーマンの副業禁止(アルバイト禁止)から解放されたことが原因なのかも知れない、と最近は思う。
サラリーマンにも、会社の仕事以外にサイドビジネスが自由に認められれば発想力は格段に増すのかも。
私の仕事場は、それまでの「いくつもの相場モニターに囲まれたディーリングルーム」から
「苗に囲まれたビニールハウス」に変わった。
「ディーラーの怒声が響く世界(ディーラーの大半はいつも負けているので不機嫌なのだ)」から
「お客様の笑声が響く世界」に変わった。
今なら相手が社会主義の国であっても、バイクの輸入の手伝いデキる自身がある。


転身はなぜかって? ……爽やかだから。


相場に勝つには?

相場は儲けたい人の強欲が渦巻いているところ、人間心理の集合体である。
常に勝ち負けがあり、「自分の勝ち分は、他の誰かの負け分(ゼロサムゲーム)」
ということ。全員が幸せに勝つということはありえないのである。
だから、勝つためには他人の行動と逆を取ることも時には平気でできる根性が必要。
皆が買い! と言っているときがあれば、
「皆がすでに買っているはず。ということは、これ以上相場は上がらない。ならばもう売らなくては!」
こんな駆け引きを百戦錬磨の猛者たちが生き馬の目を抜くように繰り広げるのであるから
簡単には勝てたせてもらえない。
相場の格言「まだは、もうなり」「もうは、まだなり」は、言い得て妙なのだ。
相場で勝ったことがあってもそれは偶然に過ぎない。勝ち続けることはありえない。インサイダー以外は。
米国のかつての投資銀行、ヘッジファンドと呼ばれる集団は国策を含めた高度な情報を手に入れる。
究極は仲間を政界に送り込むということで勝負してくる。素人が手を出して勝てるような温い世界ではない。
そういう意味で、仮に相場で儲けたとしても、それは全くの偶然なのである。
自分は天才とつい勘違いしてしまうのであるが、実はコインの表裏の確率と同等。
ビギナーズ・ラックって確率論的には出鱈目なのだ。最初に勝つ確率はコインと同じだから。
言い伝えられてきた理由は簡単だ。この偶然に出会った人が相場にハマるということだ。相場恐るべし。


(勝てなかったから今がある by 農園主)