[ポレポレ農園 イチゴ農家への道のり]

2012年8月 本圃ハウスの完成

補助金のはなし

農業を始めたいと決意した人が、行政の窓口に相談をしに行くと必ず聞かれる質問がある。
「資金は、どの位ありますか?」
余計なお世話だと思うが、2つの意味があるようだ。
農業ですぐに生計を立てるのは簡単ではないから、当面、例えば3年くらい無収入でも「生きていけますか?」
という意味と、畑を耕す道具や機械、苗や肥料代も要りますが、「買えますか?」という意味。
農地さえあれば、何とか生きて行けるさ。
その熱い?思いだけで農家を志す人間は多いらしく、それを戒めるためにこの質問がされているともいわれる。
その意味では、振い落しのための質問とも言えるのだが、業界内に入ってしまえば、サポートは大変手厚い。
そのひとつが「補助金」だ。

補助金の対象は、新規就農者(初心者)も含まれ、千葉県では、施設や生産機械に対し、市町村と合同で行う
補助金事業がある。条件は、県から認定された農業従事者(認定就農者)であること。
自らの事業計画書を県と市に提出し、審査の後、補助金の交付承認を受けることになる。
この書類手続きを煩わしいとして、申請を躊躇する農家も少なくないが、じっくり取り組めば難しいものではない。
会社人経験者なら容易いかもしれない。
自分の経営理念や営農計画を文章や数字に落とし込んでいくのだが、未知の分野だから背伸びしても始まらない。
素直に書いていくだけである。
もし、整合性の取れない部分があったとしても、行政の担当者が助け舟を出してくれる。
「この売上計画は少し楽観的ですね」とか
「仕事の従事日数に無理はありませんか?人間休みも必要ですから」とか
「年間肥料費用の算出根拠は?」とか。
多少細かいところはあるが、上司のためにつくる社内資料と比べれば、楽勝だ。


気を揉むのは、申請から承認までに長い時間がかかることである。
行政からの承認をもらうのであるから、即決、即実行とはいかないにしても、丸1年の長丁場となった。
それでも、ポレポレ農園の事例は異例の速さだそうだ。
承認が遅れて、9月の苗の定植に間に合わなかったという話はよく聞く。
「役所は仕事が遅いから」と農家が泣き寝入りするそうだが、当園には、そんな余裕はなかったので、
イチゴ栽培の適期の重要性を行政の関係者に説明して回った。
その意を汲んで、君津市役所と県庁、そして農業事務所の若き精鋭たちが、補助金の承認手続きを
フル回転で進めてくれた。
定植までに、必ずハウス工事を完成させることが農業振興につながる、との意気込みを持って。
その働きは目覚しく、「役所は融通が利かないから」という世間の風評は、大きな誤解なのだと今は言える。


( 公僕に感謝 by 農園主 )


ブルハウス・ベアハウス

 HPトップページの絵を見ていただけると、農園の全体像がわかる。

イチゴの株が植わっている本圃ハウスの広さは合計2,000u。

3連棟と4連棟の2面に分かれ、その真ん中に受付兼休憩ハウスがある。

左端(南)の2棟は育苗専用のハウスになり、合計10棟のハウスで農園は構成される。

2,000uの本舗ハウスは、2人で管理するには限界の広さと師匠は言う。

確かに、生半可な心構えではとても、手が回る広さではないと実感しているが、

これを乗り越えてこそ本物と覚悟している。


 このハウスには名前がついている。ブル・ハウスとベア・ハウス。

ブルとベアは、牛と熊のことで、相場では、強気(値上がり)と弱気(値下がり)を指す。

牛は、角を下から突き上げるので上昇相場、反対に熊は上から爪を振り下ろすので、

下落相場を表すと言われる。

「本日は、牛さんハウスへどうぞ」、「明日は、熊さんハウスの予定です」

案内に解りやすい名前だと思っている。