[ポレポレ農園主のトレンドライン]

2012年 3月4日〜10日

2012/03/04(Sun) 永遠の壱(イチ)

かつての会社の同期が、ひょっこり師匠の農園にやって来た。
ニューヨークで仕事をしているはずの彼が帰国したとは聞いて
いなかったので、サプライズだった。

入社してすぐに、彼とは気が合った。
なぜかは判らないが、波長が合うとはこんなものかと思う。
彼は今や、米国企業と直接渡り合う国際的な金融マンとして
多忙を極めている。
東京出張の合間に近況を見に来てくれたのだ。
師匠にも会いたかったようで、うれしい限りである。

彼は、数年前にベンチャー企業投資と呼ばれる仕事を経験しており、
これから成長する企業を発掘し、経営指南をしながら育てるというもの。
だから、ポレポレ農園についても、質問は鋭い。

「販売チャネルはどうなっているの?」「天候へのリスクヘッジはどうするの?」

「何とかなるよ、地元の人はいい人達だし」との私の答えには
少し不満げだったが、農地を見た途端、いまだにサッカー少年の彼は
「サッカー場 二面はいけるな!」と変に納得する。

彼が、師匠家族の前で昔話を唾を飛ばしながら、力説する。
「入社後、すぐに同期150人で最初の試験があったのですよ。
僕がビリだったのですが、1点差でコイツがビリから2番目。
そしたらコイツが言うんですよ、
「でも1点は1点、しかもこれは永遠に縮まらない1点だぞってね」

唾の出具合を見ると、
どうやら、彼の中ではまだ、1点は縮まっていないらしい。

(ポレポレ農園 恐るべし  by 農園主 )

2012/03/05(Mon) 休眠打破

週末に親苗が到着した。
ポレポレ農園で栽培する品種の親苗たちが、届いたもの。
品種によっては、特許があり、種苗法に基づいて、
許諾料を支払って苗を購入するのである。

この親苗を使って、育苗が始まっていく。
子苗、孫苗と連続して繁殖させていくため、
世代ごとに、太郎苗、次郎苗、三郎苗と呼ばれたりする。
もう少し細かく言うと、
親苗から、つる状のランナーが20センチ前後伸び始め、
これを栄養補給のパイプラインとして、次世代の芽(太郎苗)ができる、
その後、太郎苗からランナーが出て、次郎苗ができる。その後は三郎となる。
最終的に苗が自立(活着)するまで、ランナーで家族はつながっている仕組み。
親苗からは10本のランナーを目安に繁殖させ、30苗まで増やす。

順調なランナーの発生に欠かせない準備は? と言うと
なんと、休眠だそうだ。
0℃から5℃の低温にさらす(遭遇)ことで休眠させる。
必要な休眠時間は700〜800時間。

眠りが浅いとランナーの出現が低下する。
届いた親苗たちは、やってくる前に熟睡してきているのだ。

春になれば、覚醒することで(休眠打破)
新葉やランナーの展開が早まる。
起きたら、ハッスルというわけです。

(見習いたい by 農園主 )

2012/03/06(Tue) 自然体

昔からの仲間から、送られてきた近況メール。
本人は公開されるのをいやがるでしょうが。

先々週のことだそうだ。
南三陸町のボランティアに参加したという。

以下、原文そのまま。

金曜夜、ゆきの深夜バスでは、じっと黙って座っている 匿名の集団です。
「変」です。SAについても、黙ってますもん、眠いというか、
どう接していいかわからんという感じで。
夜なか中 緊張ししているかな。
ふと考えれば、都会では普通の、「通勤電車」と全く同じ。 
変ではないのです、あまりに 同じで あきれて、わらってしまうほど。

それが、一日め、ほんのすこし作業一緒にして、
同じ光景を見て、宿で共にして。宴会場で、かるく自己紹介。

バス一台の大半は、初めてです、というみなでしたが、
特に男たちは、野球部の監督と体育教師を目指す高校生から、
普通の勤め人から、商社マン引退後の大先輩まで、ふたをあければいろいろ個性あった。
その回は、上海の留学生が居ました。
日本語も出来て話もしましたが、黙々と、立派でした。
ようやく話をしはじめて、相部屋で 安心して寝ます。
翌朝からの数時間は、少し話できて、作業して 一部とは名前を名乗りあい、ようやくです。
どこまで親しくなれるか・・・。
また、都会に戻り、匿名に戻る という感じです。

女性のみなさんは、「交流」してますね。
それでも、なんとなく 気恥ずかしく、
かといって、「この行動は正解か?」ということにも自信もなく。
いったこと、見てきたことを、ネタにすることは、
自慢や偽善になるようでと、わかっている。

というものでした。
参加者全員の緊張感は、真剣だからこそ。
その実行力を尊敬します。

この友人は、周りからずっと頼りにされてきた男ですから
ボランティア参加は自然体でした。

(日本人であることを誇りに思う by 農園主 )

2012/03/07(Wed) 箱入り娘

キャベツ作りの名人である愛媛の農業生産法人が
昨年、君津にやってきた。

その直後の震災。
関東地域の風評リスクを恐れた本部からは撤退との指示が出る。
しかし、君津の責任者は、キャベツから一転、新たな挑戦を進言する。
首都圏のトマトの需要が予想以上に強い、供給も不足している。
経験値ゼロのトマトへの進出を説得し、本部のGOサインを獲ったという。

それから1年、面積20aで生産されるトマトは全て予約販売されている。
まだ、赤くなっていないトマトたちが、スーパーからの引き合いで完売している。
新品種。糖度は13度以上。
甘いだけではない、塩味も感じる、なんとも見事なバランス。
「奇策なんてないですよ。」
という彼は、生産管理から営業まで当然のようにこなす。
粘り強く各地のスーパーへ、飛び込み営業をしてきたことが結実している。

彼を訪ねたのは、ハウス内の加温方法について知りたかったから。
オランダ製の暖房機を導入している、と人伝に聞いて訪問させてもらったら、
美味しいトマトに遭遇したのでした。
このトマトは、最低気温10℃で管理(イチゴは5℃)している。
「箱入り娘」は、商品名の通り、ハウス内で手塩にかけて育てられていました。

(見かけたら「買いっ!」です。 by 農園主 )

2012/03/08(Thu) 神の手、人の手 

「下葉かき」が始まった。
下葉かきとは、
摘葉(てきよう)すること、葉を摘み取ることを言います。

イチゴは茎が短い。
クラウン(短縮茎)と呼ばれる地面すれすれにある茎から葉が伸びる。
5枚でクラウンを一周するように生え、
ちょうど、星を一筆書きするのと同じ順番と位置で5枚が展開していく。
そして、2巡目以降が同じく続く。

若い葉は、地面に垂直に伸びてから横に倒れていく。
だから新しい葉が常に太陽に近く、2巡目から古い葉は新葉の陰に入る。
新葉は1週間で1枚のペースで展開していくので、
1周に35日かかる計算。

そして、葉の光合成の生産能力は、
葉齢40〜50日で最大になる。1巡し終わる頃だ。
それ以降の能力は、低下していく。

神の手により、
葉っぱたちは、太陽に近いうちに精一杯、光合成し、
次世代に引継ぐ。
無駄のない、「いい仕事してます。」

一方の人間の手ですが
老化した葉は生産性が低いだけでなく、
葉が密集した状態は、通気性が良くないことから、
葉かきの出番となるのです。
病害虫の予防と、より効率的な株のエネルギーの分配のために、
大事な作業なのです。
当面、6時間の立ち仕事が続きます。
神の手との協働作業。

(できれば猫の手も借りたい by 農園主 )

2012/03/09(Fri) 本気(マジ)

農協(現JA)が、運営する農産物の直売所
「味楽囲(みらい)」貞元店が
昨日オープンした。
君津市2号店になるこの店は、君津の市街地に近い場所にある。
ポレポレ農園とは目と鼻の先。君津駅からは2キロと近い。

地域の活性化のために、味楽囲の誘致活動を10年前から
続けてきた2人に、オープン前日、偶然、会った。
2人とも日頃からポレポレ農園の応援をしてくれている地元の農業者だ。
(HPの道のりで、紹介した強面の天使たち)

ひとりは、カブ作りの名人。
彼の「黄金のカブ」は普段、手に入りにくいが、この味楽囲のために
当分は、徹夜覚悟で出荷準備をするという。
米作り名人は、お客さんのスムーズな買い物のために駐車場のことを
ひどく心配していた。

当日。予感は的中。
朝から70台の駐車場は満車、案内係が大汗かいていた。
店内は、人でごった返しの大盛況。
それでも、品物は、補充をフル回転してたっぷりと陳列されている。
買い物客は、皆満足そうに、いくつもの買い物袋を持っている。

店の入り口で、お客さんを迎えている2人に
「大成功ですね」と声をかけた。

2人とも快心の笑顔だった。

(オジサンの本気って、結構、格好いい by 農園主 )

2012/03/10(Sat) カステラ

母親から文明堂のカステラが送られてきた。
時々思い出したように何かを送ってよこす。

カステラが、特別好物なわけではない。
子供のころは牛乳といっしょに食べるのが、好きだったが、
随分と昔の話だ。
しかも、今回は切り落とし。切れ端がラップで包まれたお買い得品。
食べきれない位、たんまり入っている。普通のものと抹茶味。
食べ切れなければ師匠に差し入れてください、とメモにある。

確かに味はいい。

お礼を兼ねてメールした。
「師匠にもこれあげるの?」「でもどうして切れ端?」
母親の回答メールは
「工場で切るからよ。」
「 。。。 」

想定外の返しだった。
明日、師匠にもっていくとするか。

(感謝 by 農園主 )