[ポレポレ農園主のトレンドライン]

2012年 3月11日〜17日

2012/03/11(Sun) ご馳走様

中国人留学生が、師匠の農園にいちご狩りにやって来た。
東京から大型バス3台に分乗した、若い男女120人の団体。

中国人観光客については、あまりいい評判を聞かない。
兎に角、マナーが悪く、
「食べ散らかす、イチゴの株を折る、いっくらでも食べる」と言われる。
食べるのは、美味しいからでしょうから、喜ばしいことです。
が、株は大事に扱ってほしい。
果房が折れると、実がつかなくなり、
他のお客さんに食べていただくイチゴがなくなるから。

戦々恐々として迎えたところ、
拍子抜けするくらい礼儀正しい若者ばかり。
食べ散らかしは、多少あるものの、これは日本人でも同じ。

帰りには「ゴチソウサマ」と言っていく人が結構いた。
中国語にはそういう慣用句はないのでは、と思い、
引率の先生に聞いたら、
日本語の通訳を目指す生徒さん達ということだった。

なるほど。

「ご馳走様」の心も理解しているような振る舞いでした。

(中国語はチンタオビールしか知らない。。。 by 農園主 )

2012/03/12(Mon) 大人買い

週末に
昔の会社で一緒だった先輩が、ポレポレ農園の準備を見にやって来た。
天候が良くなかったので、自慢の大型オートバイBMWではなく
車での登場となった。
彼とはバイクのツーリング仲間でもあり、農園運営のよき相談相手でもある。

数年前に、外資系の投資顧問会社に転職した彼は、
数兆円の資産運用を指揮する。
私がかつて証券会社にいた時、彼の指示を受けた担当者から注文が入った。
商品一覧のリストを見ながら
「ここから、ここまで買いたい」

要は、全部だ。

莫大な金額の商品を瞬時に買いさらった。
業界では、「伝説の大人買い」と言われる。
翌日から、マーケットの地合い(雰囲気)が一変し、それまでの沈滞ムードが
一気に上昇相場に転じた。
彼の動向を気にする大手の運用担当者は多い。
知る人ぞ知る男なのである。

その彼が、わが家へ上がるなり、最初の話。
「この前、バイクに乗ってたら、環八でサインを求められてさ。
BMWのファン?と思いきや、
白いバイクで、青い服の人だったわけよ。
うーん。ここ50キロっておかしくないですかとか、
色々言ったけど、サインしたよ。
だから、今日はゆっくり来た。」

どこでも有名人らしい。

ちなみに、彼の持参したお土産は、
ベルギービール6本、吟醸酒3本、上等ワイン2本、高級スコッチ1本
やっぱり、「大人買い」なのであった。

ありがたいはずの彼のコンサルタント話は、酔ってあまり記憶がない。
きっと、彼も同じはず。

(また、呑みながら話を聞きたい by 農園主 )

2012/03/13(Tue) ご機嫌伺い

なぞなぞです。

体長0.5ミリの虫。
移動は原則歩き。飛んだり跳ねたりはしない。
上に登る習性がある。
高いところからは、自ら糸を出して風に乗ることもある。
メスは交尾すればメスを産み、しなければオスを生む。
だから繁殖は加速度的。
あらゆる野菜と果実の新鮮な葉だけを食べる。
木や株が枯れてしまうまで次々と葉を食べる。
なので、農家にたいそう嫌われている。
さあて?

答えは、「葉ダニ」。

師匠が、ハウス内に出始めたというので、
2時間、葉を探し回ったが見つけるのは至難だった。

師匠は、「葉の状態を見ればいい」と言う。
初期は、葉に針で刺したような跡(食害痕)がいくつか出る。
そして、葉が黄化する。
次には、葉にクモの巣状の白い膜ができる。
やがて、株がすくむ。(株の背がすくんだように低くなる)

それでも、我々に見分けが難しい理由は、
春からは葉が厚くなるため、食害痕が、つきにくくなること、
そして、葉の黄化は、重要肥料のひとつであるチッソ不足と
間違えることがあるため。
生産者が頭を悩ます所以(ゆえん)です。

だから、師匠はいつも
「イチゴさんたちのご機嫌伺い」
に出かける。

最近では、対抗策に天敵を利用する生産者も増えてきた。
葉ダニを食べる異種のダニ(チリカブリダニ)を放して、
退治してもらう捕獲作戦だ。
それでも、相手の加速度的な繁殖前に投入しなければ、
作戦は成功しないから難しい。

最後の切り札は、やはり「ご機嫌伺い」になりそうだ。
葉と株の地道な観察に集約されるのである。

(師匠はイチゴと話せるらしい by 農園主 )

2012/03/14(Wed) 変わり者

イチゴの生育のためには、最低気温5℃以上で管理することが必要
と前にも書いたかも知れません。
冬場にハウス内の暖房機は必需品なのです。

農業用の暖房機は、国内に歴史のあるメーカーが寡占的に供給している。
信用と実績があるからだろう。

ところが、先日、農業資材の展示会に参加したら、
オランダ製の暖房機に出会った。
優れものである。

オランダを中心に北欧での実績は十分。暖房効率が高い。
燃料は灯油、国産の重油を燃料とするものよりランニングコストが安い。
本体価格も国産の3分の2くらいと安い。
見た目もジェットエンジンみたいで、ちょっと格好いい。
無骨な国産は場所も3倍くらい取る。

心配は、購入後のメンテナンス。
販売開始後8年経ち、信用が付き始めたようであるが、そこは国産が優位。
だからこそ、寡占メーカーは農家の圧倒的支持を集めているのだろう。

システム運用の世界では、心臓部であるサーバーのトラブルに備えて
ホットスタンバイ と コールドスタンバイというものがあると聞きました。
前者は、予備のサーバーを常時待機させておく方法、
後者は、緊急時に設定できるサーバーをとりあえず準備しておく方法。

ポレポレ農園では、2つの暖房機を設置しようと思っています。
オランダ製暖房機は、幸いにも50キロの重量なので、
いざとなれば、移動できる。ヨイショ、ヨイショと。

一応、コールドスタンバイと呼ぶことにする。
導入を検討中。

(周りの農家には変わり者だね、と言われる by 農園主 )

2012/03/15(Thu) 工程表

20年間のサラリーマン生活で身につけた?ことのひとつに、
スケジュール管理があります。
何を、いつまでにやるか、ということ。
期限を逆算して仕事はするものだ、とよく怒られました。

ゴルフの名プレーヤー、J.ニクラウスは自伝で
ティー・グランドに立つと、映像フィルムが逆回転するように、
ずっと先の目標のカップからボールが出てきて、ポーン、ポーンと
攻めるべきポイントからポイントへと球が戻ってくる。
そして最後にスタート・ティーの上におさまる、と書いています。

昨日、市役所で会議がありました。
県庁のヒアリングを首尾よく対応してくれた若き精鋭たちと
その報告と今後の準備について、打合せをしました。
農業事務所、農協の担当の方も顔をそろえ、
精鋭の一人が取り仕切ってくれた。
冒頭で、彼は
「今後のスケジュールについて、認識を共有しておきたいと思いますので。」
と言って全員に配ったものは、卓上カレンダーのコピー数枚。4月〜12月分。
最初はうん?と戸惑った雰囲気でしたが、
皆で話を進めていきながら、カレンダーに書き込んでいく。
カレンダーのマス目がビンゴのようで、結構盛り上がる。

話もスムーズに進んだ。こういうやり方もありですね。

(自分のボールは行ったり来たり、なかなかティーには戻ってこない by 農園主 )

2012/03/16(Fri) 少年の夢

今朝のこと。
遠足で、東京の国立大学付属小学校から1年生が100人
師匠の農園にイチゴを食べに来ました。

こんな小さい子たちなのに、なんと大人しく、行儀がいいことか。

違う子が1人いた。
「夢がかなったー!
イチゴだけでおなかいっぱいにする夢が、かなったー。
うれしーい!」
絶叫している。

こういう子が意外に伸びたりする。

(次の夢は何だろう by 農園主 )

2012/03/17(Sat) トヨタ方式

トヨタの仕事のやり方は、
今すべき仕事を実行すると同時に、
将来やりたいこと、やるべきことを考え、
その準備をしていく、のだそうです。

同時並行で仕事を進めるって、
なかなかできない、タフなことですよね。

昨日、イチゴの親苗を植え替えました。
ポットと呼ばれる直径7センチの小さな鉢から
土量の多いプランターへの植え替え。
親苗から子苗をズンズン増やし、元気な株にまで生育させる
「育苗」が始まりました。
これは、まさに来シーズンの準備なのです。

育苗と収穫の作業が重なることを、
他の作目を作る農家さんたちは「大変だよー」と言っていましたが、
実際は、ワクワクするものでした。

異なる時間軸の仕事を同時に進めていくことは
大変な充実感でした。

(今なら、トヨタで働けるような気がする by 農園主)