[ポレポレ農園主のトレンドライン]

2012年 8月19日〜8月25日

2012/08/19(Sun) 夏休みの宿題

空手道や剣道などの武道、あるいは、書道、花、茶といった技能の「修行」をする場合、
その過程を3段階に分ける言葉がある。
「守破離」である。
守=まずは決められた通りの動き、つまり形を忠実に守り、
破=守で学んだ基本に自分なりの応用を加え、
離=形に囚われない自由な境地に至るというもの。

形をしっかりと身に付けることではじめて、
高度な応用や個性の発揮が可能になるということである。

師匠から教わるイチゴの栽培技術をどこまで掘り下げて、身につけられるか、
「守」のステージを固めることが、目下の宿題である。

甥っ子2人が夏休みで遊びに来ていて、ふと、この3文字を思い出した。
自由奔放さは彼らの特権であるが、この子達の将来に対し大人たちは責任を持つ。
だから、厳しい人生を生き抜くための稽古をつけてあげなくてはいけない。
これも相当、大きな宿題である。

( 自分のことでアップアップなのだが by 農園主 )

2012/08/20(Mon) ありのまま

3日前に施肥をした。人海戦術で。
おかげで、西日に輝く苗には、葉にツヤと色に深みが出てきた。
葉の輪郭がしっかりし、厚みもある。チッソが効いている証拠だ。

[写真]肥料が効いた苗の葉っぱ

ヤンキースの黒田投手(37歳)がエース級の活躍をしている。
広島時代からの自らを追い込む厳しい姿勢は変わらない。
ジラルディ監督に「ありのままで行け」と励まされたと言う。

苗の生育は、自分がコントロールできるものではない。
成長に合わせて、世話する、それしかできない。
師匠は言う。
「適期にすべきことをする。」

( 生命力のままなのである by 農園主 )

2012/08/21(Tue) 社長

ハウス脇に、車が停まった。
軽トラックではないので、農家の仲間ではない。
50代の身なりのきっちりした男性が訪ねてきた。
「社長さんですか? こちらで働かせてもらうことはできますか?」
全く予想していなかった質問に、
「いえ、社長ではなく、いや、うちは、始めたところで。。。」
しどろもどろに答えると、
「ぶしつけに失礼しました。大きなハウスができたものですから。」
と立ち去った。近所にお住まいの方のようだ。

戦後、倒産する会社が相次ぐ中で、人員整理を一切しなかった企業がある。
「社員は家族」との信念からだ。(「海賊と呼ばれた男」 百田尚樹著)

ポレポレ農園でも、いずれは、雇用を考える時期がくるかも知れない。
その時には、「家族」を増やす覚悟ができているだろうか。

( 社長、ではない by 農園主 )

2012/08/22(Wed) やるべきこと

苗の土の乾きが早いのは、残暑のせいか。
この数日、水遣りに結構時間がかかっている。
ほっと、一息ついて、草刈の準備をしていたら、
師匠とトモ子さんが苗の様子を見に来てくれた。
「葉を整理したほうがいいね。水かけもうまくいかないでしょ。」
ハウスに入った瞬間に見抜かれる。

子苗をはさんでから、3週間経ち、葉数は当時の2.5枚〜3枚から、
2枚程度増えている。葉に水が当たり、ポットへの灌水にどうしてもムラが出てしまう。
葉を整理すれば、苗のクラウン(根元)に光も入り土の表面が乾燥するので、
病気の予防にもなる。

葉の整理(葉かき)の適期は今月中だ。
花芽分化の20日前からは、「苗をいじらないようにする。」
肥料を切るタイミングと同じで、スムーズに生殖過程に移行させるためである。

「早めに仕事しないと、みんなに置いていかれるよ」
トモ子さんから、いつもの優しい発破がかかるのであった。

( さぁて、と by 農園主 )

2012/08/23(Thu) 早稲

稲の刈り取りが、ついに始まった。
早稲(わせ)である。
農園の目の前の田んぼでも、
「1年ぶりだから操作を忘れたよ」
73歳の大ベテランが、楽しそうにコンバインに乗り込む。
あぜ道から田んぼに入るのだが、手前でコンバインが「ウィーン、ウィーン」
と唸ったまましばらく動かない。
操縦席では、キョロキョロする人影あり。
突如、動き始めるや、50a(5000u)の田んぼを2時間ほどで刈り終える。

[写真]コンバインで稲を刈っているところ

[写真]コンバインが通り過ぎたところ

10a当りの収穫は米8俵(480キロ)の見込み。今年も上々の出来だそうだ。
コンバインの値段は1台800万円するという。
「新しいのがほしいね。これが3年目だから」
コンバインは下取りもあり、中古市場もある。
米農家の共通点は、ここにある。
皆、機械が好きだ。
クーラー、CD付きは当たり前である。

( 快適すぎるでしょ by 農園主 )

2012/08/24(Fri) 張る

高設栽培の設備工事が進んでいる。
黒いシートを張り始めた。
今後、このシートの中に培地を入れ、苗を定植していくことになる。

[写真]高設ベッドに土入れシートを張ったところ

実は、これがこのシステムの肝。
数ある設備の中からこのメーカーを選んだ理由が、ここにある。
高設栽培では地面を使わないので、排水性が大変重要になる。
このシートの秘密は、特殊ビニールの編み方にあり、
その編み方は特許を持つ。
上と底で編み目が変えてあるのだが、これが見事な排水を実現する。

なおかつ、水分だけでなく、シートは根も通すので、根まきを起こさない。
根は、酸素に触れると成長が止まり、新しい発根を促すため、
次々と根が張っていくことになる。

栽培上は、いいことばかりなのだが、難点もある。
よそよりも値段が「張る」ということだ。。。

( それでも、イチゴのために by 農園主 )

2012/08/25(Sat) 祭り囃し

「アミスター20」はイチゴのタンソ病の消毒薬である。
うどんこ病にも効果があるということで、全国の生産者に多用されてきた。
ところが、最近では、耐性菌が発生し、効かなくなっていると、
関係者の間で言われる。

「ガスター10」を初めて服用した。
冷たいものを飲みすぎたせいか、胃の中に鉛があるように、もたれて苦しい。
今朝の大事な水遣りは、嫁にやってもらい、なんとかなったが、
夕方になっても重いので、黄色の看板の薬屋に相談した。
「夏バテでしょうね。お酒を大量に飲んだりすると胃の粘膜が荒れますよ」
飲酒の話はしていないが。

服用後、2時間。鉛は小さく感じられる。効いてきたらしい。
遠くから、祭り囃しの太鼓が聞こえてくる。
夏はもうすぐ終わりのようだ。

( 残暑にご用心 By 農園主 )