イチゴたちの家は、高級ハウスがやっぱりいいのか?それとも安普請でもいいのか?
ハウスの差は、おおよそ骨組みで決まる。鉄骨の角材を使うか、丸パイプを使うか。
(その他の部材や工法にも違いはあるが、別の機会に)
師匠の農園に通い始めて半年経ったころ、ハウスの施工業者と打合せをしたのだが、どうもピンとこない。
そこで、修行の合間をぬって、方々の現地視察に出かけた。
イチゴ農家中心に野菜・花卉農家のハウスを見て回る。骨組み、部材、施工方法の違いについて、
実際の使い勝手や費用などを農家の方々にしつこくヒアリングした。
その結果、「どうやら、鉄骨の角材を使うハウスは頑丈だが、コストが高過ぎる」と実感。
そして最後の決め手は、師匠のアドバイスだ。
「ハウスの仕様は、イチゴの生育には関係ないよ」
安普請でも、イチゴたちは不満を言わずに生育してくれる。
丸パイプによる低コストな骨組みを迷わず選択。
しかし、安普請なりにも、ひと工夫する。
@使用するパイプの厚みを太くすること
A口径の大きいパイプを補強に入れること
どちらも現地視察で得た知識。各地の農家たちの知恵と経験を結集させてもらった。
肉厚のパイプは、台風被害の多い静岡県では常識であるし、補強については、従来のダブルクラッチ
(パイプを2本重ねる方法)よりも、大口径を使用すると強度が増すと教わった。
ハウス内部についても、イチゴたちの生活環境に最大限に気を配る。
暖房完備。気温7℃以下で生育に支障が出るので、それ以上の温度に保ちつつ、さらに炭酸ガス発生機を
利用してハウス内の二酸化炭素濃度を高める。
光合成を活性化させるためである。
酸素カプセルに入り、頭がスッキリした経験がある。
イチゴたちもきっと増々やる気になるはずだ。
イチゴの栽培方法は大きく分けて2つ。「土耕栽培」と「高設栽培」がある。
土耕栽培は、地面に直接植えて栽培する、伝統的な方法。
高設栽培は、90pくらいの高台の設備を利用して栽培する方法。
20年程前から水耕栽培という形で始まり、その後は「有機培養土(培土)」を利用する方法が増加している。
培土を深さ30pの栽培槽に入れて高台に設置したものが「高設培土システム」と呼ばれる。
ポレポレ農園は、これを採用している。
選んだ理由は、
@ 努力が報われるシステムであること。
高設培土栽培では、土量が地面に比べて少ないので、肥料や水分の加減が生育に直接的に伝わりやすく、
地面よりも一定条件でのデータが蓄積しやすい。緻密な管理によって、独自の味が出しやすいのである。
地道な研究努力が報われる余地が大きいと言える。
A 農園を訪れた人に喜んでもらえること。
イチゴの実が、地面ではなく空中にぶら下がっているので、衛生的。
しかも、かがんで摘むのではなく、立ったままの姿勢で摘んで食べられる。
子供にとっては、目線の高さにイチゴがずらっと生っているので、まさにパラダイス。
B 作業が楽なこと。
これは、生産者の都合だが、土耕栽培は中腰作業なので、とにかくつらい。腰が。
立ったままで作業ができることは「本当に幸せ」なのである。